クレインポートブレンド七重奏団

以前デザイナーの部下を20名ほど抱えていたときに、仕事中にヘッドホンをするのを禁止にしようかどうか考えたことがあった。普通の声では呼んでも聞こえず、肩を叩けば驚かれる、長い付き合いならまだしも、新人女子には憚れる、そもそもメンドくさい、ということがあったからだ。ちなみに僕にはBGMは必要ない。仕事しながら頭の中で音楽が鳴っていることが多いから。滑らかな線を描くとき、細かいアンカーポイントを置くとき、アニメーションを考えるとき…その時その時の音楽が鳴っている。グリッドデザインが基本のWebの表層デザインは型にはまりがちなので、デザインに動きを持たせるためにも頭の中で音楽を鳴らせという話は時々していた。結局そんなルールを作ることはなく、近づいて声をかけたり、肩を叩いたりというメンドくさいことを続けることにした。


珈琲の仕事ではどんなときに音楽を意識するかというと、その味わいに関してだ。香水にトップノート、ミドルノート、ラストノートがあるように、珈琲にも口元に近づけたときの香り、最初に口に含んだ時のインパクト、飲んだ後の余韻、それがすこし冷めたときにどう変化するか、という楽しみがある。音楽で例えるならストレートは個性で押すソロ演奏、ブレンドはトリオ以上になるからハーモニーが加わりより複雑な味わいが楽しめる。トリオがピアノ、ドラムス、ベースだとすると、ベースにはブラジルを、美しいメロディーラインときらびやかなソロを展開してほしいピアノにはエチオピアを、うねりながらも正確なリズムを叩き出すドラムスにはコロンビアを…などとジャズ好きな僕は余計な想像を膨らませながらブレンドしていく。そのうちサックスやトランペット、ギターも参加させ、コンガも入れたいなどとやってるうちに6〜7種の豆をブレンドするようになった。


さてブレンド珈琲は店の味を表すものだから常に同じでなければならないか、というとそんなことはないと思う。好みの方向性は変わらないが、ときどきメンバーを入れ替えたくなることもある。それに加えライブの初日と二日目、三日目の演奏が同じ演目でも変わっていくように、豆も焙煎後の時間経過で変化していく。


クレインポートの珈琲は脂の乗り切ったベテラン揃い(深煎りってことです)。渋い演奏を聴きたいときはCranePort Blend Septetを聴きに来てください。

CranePort DesignPlanning

デザイナー、元カフェのマスター、珈琲豆焙煎士、メンタルヘルスカウンセラー

0コメント

  • 1000 / 1000